2023年12月に経営コンサルタント業の倒産が増加しているという東京商工リサーチ発行のニュースがありました。中小企業診断士を取得して経営コンサルタントを目指そうとしているけども、経営コンサルタント業はもうダメなのかと思っている方に向けての見解です。
▼ちなみにこの記事のニュースはこちら
経営コンサルタント業の倒産という見出しに釣られてはいけない
経営コンサルタント業の倒産が増加というニュースに対して、経営コンサルタントなんかうさんくさいから倒産して当然とか、経営したことも無い人が経営のコンサルタントができるわけがないという意見が多々でていますが、実情がどうなのかというのはこのニュースだけではわかりません。
そもそも経営コンサルタントの市場規模は拡大している
Googleで「経営コンサル 市場規模」で検索した結果はこちらです。
現在、出てくるデータは2021年のデータ+2022年の予測というものが多いのですが、軒並み市場規模が拡大しているということになっています。肌感覚としても次のような仕事に関するコンサルタントおよびその仕事は増加しています。
- 補助金・助成金の申請に関連したコンサルタント
- 返済困難な事業者に対するコンサルタント
今後は、前者の補助金・助成金関連のコンサルタントは減少していくと思います。一方で、後者の返済困難な事業者に対するコンサルタントは増加していくと思います。
後者については、代表的なものとして405事業(経営改善計画策定支援事業)と呼ばれるものがあり、国が認定した経営革新等支援機関の支援を受けながら経営改善計画を作る場合に、専門家に支払う計画策定費用等の一部が補助される制度です。他にもさまざまな制度があり、2022年以降、そのような仕事は増加しています。
では、なぜ、経営コンサルタントの倒産が増加しているのか?
経営コンサルタントと一口に言ってもさまざまなジャンルがあります。「戦略系コンサルタント」「IT系コンサルタント」「財務系コンサルタント」「人事系コンサルタント」「業界特化系コンサルタント」などなど。
経営コンサルタントと聞いて、多くの人がイメージするのは、「戦略系コンサルタント」かと思いますが、実際にはさまざまなコンサルタントが存在します。
で、このニュースのものとなる経営コンサルタント業は、日本標準産業分類の「経営コンサルタント」全体の話となります。さまざまなコンサルタントが存在するため、コロナによる影響を回避できずに倒産した経営コンサルタント業も多数いることは簡単に想像できます。
例えば、業界特化系のコンサルタントで飲食業を中心に展開していた場合、そもそも対象となる顧客である飲食業が倒産したり、休業していたうえ、コロナ禍という状況においてはコンサルティングをして対応できる状況ではなかったということは簡単に想像できます。
怪しいコンサルタントも多数いることは事実
怪しいコンサルタント、うさんくさいコンサルタントがいることは事実です。そもそもコンサルタントというのは誰でも無資格で何の設備もなく開始することができ、実力や能力と関係なく経営コンサルタントと名乗ることができるという背景があるからです。
また、会社員だと社長が連れてきたコンサルが現場のことがわからず好き勝手に言われたといった経験がある方も一定数いて、こういった印象があるのだと思います。
経営したことが無い人が経営コンサルタントができないという意見について
一見、一理あるように聞こえますが、経営をするということと経営の助言(コンサルティング)をするということは関連していることもあれば、まったく関連していないこともあると思います。スポーツの世界で「名選手、名監督にあらず」と言われるように立場が異なれば求められる能力が異なります。
また、特定の事業を成功させたからと言って、他の事業を成功させることができるかと言えば、そうは言えないです。
1社を成功させた経験よりも100社支援をした経験の方が、経営コンサルタントをするうえで重要と言えます。
私自身も会社を経営していますが、中小企業診断士として他社の決算書を見るたびにさまざまな発見や気づきがあります。多くの決算書を見た経験があるかないかという違いだけを取っても、1社を成功させる経験だけでは不足していると言えると思います。
一方で、経営者の立場になるという意味では、経営の経験は必要となります。その点で私を評価してくれる事業者の方もおられます。この点はバランスかなと思います。
中小企業診断士としての未来についてはこの記事では判断つかないが、悲観的ではないと思うのが私の見解
この記事を持って、中小企業診断士や他の士業によるコンサルタント業への展望を暗いと感じる必要はないというのが私の見解です。
すでに記載にしたように補助金コンサルのような仕事は減少すると思いますが、経営支援の仕事は増加していくことが考えられます。他にもDX化の波を捉えたITコンサルタントや働き方改革・テレワークといった労働環境の変化をとらえた人事コンサルタントのような仕事は増加するのではないかと思います。
また、前述の経営改善計画の策定などは中小企業診断士保有者に限定した仕事となっているケースも多くあり、無資格の経営コンサルタント業とは少し違う点もあります。
この記事の内容をまとめると
- この記事で書かれれている経営コンサルタント業というのはさまざまな経営コンサルタントを母数にした数字である
- そもそも経営コンサルタント市場そのものは増加しているという別のデータもある
- コロナ融資の返済困難な事業者が増加しており、経営改善計画の策定などの仕事は増加する
- 補助金に絡んだ仕事は減少していく傾向にあることは間違いない
- 経営と経営の助言は別軸であり、求められる能力・経験も異なる
このニュースをもとに中小企業診断士としての未来を悲観する必要はないというのが私の見解です。
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