中小企業診断士2次試験は、与件文の抜き出しと言い換えがポイントとなります。実際に令和2年度の事例Ⅰをどのように解いていくのかを解説します。

企業分析をしっかりしていては時間内に終わらない。与件文からどう抜き出すかがポイント

中小企業診断士2次試験の解き方は、本来、与件文を読み対象企業の分析(診断)をおこなって設問に解答していくという形です。ですが、この方法は時間的制約を考えると現実的ではありません。

では、どうするのかというと

2次試験事例Ⅰ~Ⅲの解き方

次のステップで解いていきます。

  1. 与件分から企業の概要を理解する
  2. 設問を読む
  3. 設問に必要な要素を抜き出す
    1. 抜き出した内容をそのまま書く(文字数オーバーする場合には言い換えて書く)
    2. 抜き出した内容に1次試験の知識を加えて解答する

実際に令和2年の事例Ⅰで実践

1.概要を理解する。令和2年の事例Ⅰの概要

  • A社は老舗の蔵元
  • 日本酒の国内消費の減少に伴い売上減少し、廃業を検討
  • 地元の有力者が友好的買収 •有力者の孫のA社長に立て直しを取り組ませる
  • A社長は祖父の下で3年間修業
  • 敷地をリニューアルし飲食店などに開始する
  • 順調に売り上げを伸ばす
  • 今後を見据えて人事制度の改善の必要性を感じている

事例Ⅰは組織というテーマですが、例年、マーケティング的な解答をしてしまいそうな問題が多いです。令和2年度は組織というテーマから外れにくい問題でした。

1-1:A 社の経営権を獲得する際に、A 社長の祖父は、どのような経営ビジョンを描いていたと考えられるか。100 字以内で答えよ。

与件分で使うのは次の部分、ほぼ抜き出し型だが、既存事業に対するシナジー効果が得れるということに気づければ良い。

抜き出しポイント

1-2: A 社長の祖父が A 社の買収に当たって、前の経営者と経営顧問契約を結んだり、ベテラン従業員を引き受けたりした理由は何か。100 字以内で答えよ。

設問1-2もほぼ抜き出し型。そのまま抜き出すと文字数が厳しいので「雇用の維持」「ノウハウの継承」と言ったワードに置き換える

抜き出しポイント

2: A 社では、情報システム化を進めた若い女性社員を評価し責任者とした。
ベテラン事務員の仕事を引き継いだ女性社員は、どのような手順を踏んで情報システム化を進めたと考えられるか。100 字以内で答えよ。

第2問は1次試験の知識を使う問題。システム化の手順にについて問われているが、手順については与件文には出てこない。何をどのようにシステム化したのかを考える。システム化したのは、ベテラン女性事務員の仕事。 システム化とは標準化・マニュアル化・DB をして従業員が使えるようにするまで。その点をまとめて書く

抜き出しポイント

3:現在、A 社長の右腕である執行役員は、従来のルートセールスに加えて直販方式を取り入れ売上伸長に貢献してきた。その時、部下の営業担当者に対して、どのような能力を伸ばすことを求めたか。100 字以内で答えよ。

どのような能力を伸ばしたかは明記されていない。この問題では、「どのような能力を伸ばすことを求めたか」=「どのようなことを任せたか」、「任せたことに必要な能力は何か?」と考える。必要な能力は何かということを考える際には1次試験の知識を使う。

具体的には、下記の2点

  • 直販方式=顧客ニーズの把握による提案営業
  • 売上を伸長させた=新規顧客を獲得した

杜氏や蔵人との橋渡し役にはコミュニケーション力がいるが、設問は直販方式を取り入れて売上伸長したことについて聞かれているので不要と思われる

抜き出しポイント

4:将来、祖父の立ち上げた企業グループの総帥となる A 社長が、グループ全体の人事制度を確立していくためには、どのような点に留意すべきか。中小企業診断士として 100 字以内で助言せよ。

与件分には課題、問題と感じている点が記載されているので、その対策を1次試験の知識を使ってかく。

具体的には、年功序列型⇔成果主義、経験や勘をベース⇔公平な制度 といったこと。ちなみに事例Ⅰの伝家の宝刀は、「モラール向上」や「士気向上」という表現。わからなければ、これを書いておけば多少は点が貰えるはず。

抜き出しポイント

動画ではさらに詳しく説明していますので、よろしけれな視聴ください。