「行政書士は食えない」
「廃業率が高い」

行政書士を目指している方なら、一度はこのような話を目にしたことがあるのではないでしょうか。

私自身、中小企業診断士・行政書士として活動していますが、行政書士という資格そのものに問題があるとは考えていません。

一方で、行政書士として独立・開業することは決して簡単ではないとも感じています。

今回は、行政書士の廃業率が高いと言われる理由を3つ挙げたうえで、それでも行政書士という資格には十分価値があると考える理由についてお話しします。

行政書士の廃業率が高いと言われる理由① 試験と実務がかけ離れている

行政書士試験は、憲法や民法、行政法などの法律知識が中心です。

もちろん資格試験としては重要な知識ですが、実際の仕事では、

  • 建設業許可
  • 飲食店営業許可
  • 在留資格(ビザ)
  • 相続・遺言

など、具体的な実務を行います。

これらは試験で詳しく学ぶわけではないため、多くの方は合格後に改めて実務を勉強することになります。

さらに、行政書士の仕事は役所への申請や法律に関わる内容が多いため、「間違えてはいけない」という心理的なハードルも高く、最初の一歩を踏み出しにくい資格でもあります。

行政書士の廃業率が高いと言われる理由② 仕事の入口が少ない

行政書士として登録したからといって、仕事が自然に入ってくるわけではありません。

行政書士会に登録しても仕事が配分されることはほとんどありませんし、行政書士同士で仕事を紹介し合うケースも、それほど多いとは感じていません。

「ホームページを作ればいい」
「SNSで発信すればいい」
「商工会議所へ行けばいい」

という意見もあります。

もちろん、それで成功している方もいます。

しかし、商工会議所などの公的支援機関は地域差が非常に大きく、すでに専門家が多数登録されている地域では、新人が入り込むのは決して簡単ではありません。

結局のところ、自分自身で営業し、仕事の入口を作る必要があります。

行政書士の廃業率が高いと言われる理由③ リピートしにくい仕事が多い

行政書士の業務は、一度依頼を受けたら終了するものが少なくありません。

例えば、

  • 相続
  • 遺言
  • 会社設立
  • 各種許認可

などは、更新があるものもありますが、多くは一度きりの仕事です。

つまり、常に新しいお客様を獲得し続けなければ売上が安定しません。

そのため、

  • 建設会社とのネットワーク
  • 葬儀会社との提携
  • 不動産会社との連携
  • 業界団体との関係

など、自動的に仕事が入ってくる仕組みを作ることが重要になります。

もし、そのようなルートがない場合は、補助者や業務委託として経験を積みながら、自分の専門分野や営業ルートを作る期間を設けることも有効だと思います。

行政書士資格と行政書士事務所はまったく別物

ここまで3つの理由をお話ししましたが、結局すべてに共通することがあります。

それは、

行政書士資格を取得することと、行政書士事務所を経営することはまったく別の話

ということです。

私は、行政書士資格とは

「行政書士事務所を経営する権利を得る資格」

だと考えています。

資格を取得した瞬間に手に入るのは、

「行政書士として仕事ができる権利」

であって、

「仕事がもらえる権利」

ではありません。

営業し、

専門分野を作り、

実務を覚え、

信頼を積み重ね、

一人の経営者として事業を作っていく必要があります。

行政書士試験はゴールではなくスタートライン

ここで少し考えてみてください。

資格学校などでは、「行政書士の平均年収○○万円」といった紹介がされることがあります。

もちろん、実際に高収入を得ている行政書士もたくさんいます。

しかし、会社員で年収700万円や1,000万円を得ている方も、学生時代から勉強し、就職し、何年も経験を積み重ねた結果、その収入に到達しています。

行政書士試験は難関資格ですが、勉強時間だけで言えば数百時間から1,000時間程度と言われています。

その勉強時間だけで、長年努力してきた人と同じ収入を得られると考える方が不自然ではないでしょうか。

資格取得はあくまでスタートラインです。

そこから行政書士事務所という事業を育てる努力が必要になります。

それでも行政書士という資格には価値がある

ここまで読むと、「行政書士はやめた方がいい資格なのでは?」と思われるかもしれません。

しかし、私はそうは思っていません。

特に40代・50代で独立を考えている方には、行政書士は非常に魅力的な資格だと思っています。

理由は、

  • 初期投資が少ない
  • 在庫を持たなくてよい
  • 国家資格という信用がある
  • これまでの経験や人脈を活かしやすい
  • 飲食業や物販と比較するとリスクが低い

からです。

例えば、建設業で長年働いてきた方なら建設業許可、外国人雇用に携わってきた方なら在留資格、金融機関や不動産業界なら相続など、自分の経験を活かせる分野を選ぶことで大きな強みになります。

まとめ

行政書士は決して「資格を取れば稼げる資格」ではありません。

しかし、

資格を活かして事業を作れる人にとっては、大きな可能性を持った資格

だと思います。

行政書士試験に合格すると手に入るのは、

「仕事」ではなく、

行政書士事務所を経営する権利です。

これから行政書士を目指す方は、試験勉強だけでなく、

  • 誰のどんな悩みを解決するのか
  • どこから仕事をいただくのか
  • どんな専門分野を作るのか

という「経営」の視点も、ぜひ一緒に考えてみてください。

そうすることで、行政書士という資格の価値を最大限に活かせるはずです。