「会社を辞めて独立するつもりはないけれど、国家資格を取って副業に活かしたい」
そんな方も多いのではないでしょうか。
国家資格というと独立・開業をイメージしがちですが、会社員を続けながら資格を活かして収入を得る方法もあります。
では、副業で稼ぎやすい国家資格は何なのでしょうか。
私は中小企業診断士・行政書士として活動していますが、結論から言うと、「この資格を取れば誰でも副業で稼げる」という国家資格はないと思っています。
重要なのは資格の平均年収や難易度だけではありません。
自分の働き方や人脈、本業との関係によって、副業に向いている資格は大きく変わります。
今回は、中小企業診断士・行政書士・宅建士・社会保険労務士・FPを中心に、副業として国家資格を活かす場合の考え方を紹介します。
副業目的なら、どんな国家資格を選ぶべきか
国家資格といっても非常に多くの種類があります。
今回は「会社員を続けながら、資格そのものを使って個人で仕事を受注する」という前提で考えます。
例えば司法書士や税理士などは、取得までにかなりの勉強時間が必要です。
もちろん価値の高い資格ですが、副業だけを目的として取得するのであれば、費やす時間とのバランスを考える必要があります。
一方、簿記やIT系資格などは、本業でのキャリアアップや転職には有効ですが、資格を取得しただけで個人として仕事を受注できる性質のものとは少し違います。
そこで候補になりやすいのが、
- 中小企業診断士
- 行政書士
- 宅建士
- 社会保険労務士
- FP
などです。
ただし、この中でどれが一番副業向きなのかは、人によって異なります。
副業向きの国家資格を選ぶ3つのポイント
私は、副業として資格を選ぶ場合、特に3つのポイントを確認した方がよいと考えています。
1.稼働できる時間
最も重要なのが、自分がいつ仕事をできるのかです。
平日の昼間に動けるのか、夜なら対応できるのか、土日なら時間を確保できるのか。
資格によって、仕事が発生する時間帯はかなり違います。
例えば役所への申請が多い仕事であれば、平日の昼間に全く動けない会社員には難しい場合があります。
反対に、夜間や土日、自宅で作業できる仕事なら、一般的な会社員でも副業として取り組みやすくなります。
2.仕事につながる人的ネットワーク
次に重要なのが、今の仕事や人間関係から、その資格の仕事が発生する可能性があるかです。
副業であれば、本業のように毎月何件も新規顧客を獲得する必要はありません。
年に数件でも、自分の周囲から自然に相談が発生するのであれば、副業として成立する可能性があります。
資格を選ぶ際には「この資格は稼げるらしい」ではなく、**「自分の周りで、この資格を使う仕事が発生するだろうか?」**と考えてみることが重要です。
3.本業と競合しないか
副業をする場合、本業との関係も確認しなければなりません。
勤務先が副業を認めているかだけでなく、自分が行おうとしている仕事が勤務先の事業と競合しないかも重要です。
特に本業と近い分野の資格を活用する場合には、勤務先の顧客や情報、人脈との関係にも注意が必要です。
実務スキルより先に考えておきたいこと
資格を仕事にするとなると、「自分にはまだ実務スキルがない」と心配になる方もいると思います。
もちろん、お客様から報酬をいただく以上、必要な知識やスキルは身につけなければなりません。
ただ、実際の士業の仕事では、同じ種類の業務でも案件ごとに条件が異なります。
資格を取った時点ですべての案件に完璧に対応できる状態になることは難しく、実務の中で覚えていくことも多くあります。
そのため、副業を始める前の段階では、
仕事を獲得できる環境があるか、そして獲得した仕事を納品する時間を確保できるか
という点も非常に重要です。
「年間売上50万円」を一つの判断基準にする
国家資格を副業として活用する場合、資格を持っているだけでは済みません。
資格によっては登録費用や会費が必要ですし、仕事を始めれば帳簿管理や確定申告などの手間も発生します。
そのため、年間数万円程度の売上では、費用や手間を考えると副業として続けるメリットが小さくなる可能性があります。
そこで私は、一つの目安として、
「この資格を取得したら、自分の環境で年間50万円程度の売上を作れそうか?」
と考えてみることをおすすめします。
「必ず年間50万円を稼ぎましょう」という意味ではありません。
資格を取得するかどうかを判断するためのシミュレーションです。
例えば、自分が取り組みたい業務の報酬が1件10万円程度なら、年間5件で50万円です。
つまり2~3か月に1件程度。
「自分の今の仕事や人間関係なら、そのくらいの頻度で相談がありそうだ」
と思えるのであれば、副業として検討する価値があります。
① 中小企業診断士は副業と相性がいい
個人的に最も副業としておすすめしやすいのは、中小企業診断士です。
実際、会社員として働きながら診断士として活動している「企業内診断士」は多くいます。
理由の一つは、仕事の時間を調整しやすいことです。
例えば、
- 事業計画の作成支援
- 補助金関連業務
- 執筆
- セミナー
- 審査
- 専門家派遣
など、さまざまな仕事があります。
事業計画や執筆などであれば、平日の夜や休日に作業することもできます。
経営者との面談についても、必ずしも平日の9時から17時だけとは限りません。
もう一つのメリットは、仕事の入口を作りやすいことです。
地域によって状況は異なりますが、診断士協会などを通じて仕事につながる場合もあります。
そのため、資格取得前には経営者との人脈がほとんどなかった会社員でも、資格取得後に新しい仕事のネットワークへ入っていける可能性があります。
② 行政書士は「今いる業界」との相性が重要
行政書士も副業の可能性がある資格ですが、中小企業診断士とは少し特徴が違います。
行政書士の大きな特徴は、取り扱う仕事の幅が広いことです。
例えば、
- 飲食業界 → 飲食店に関係する許認可
- 建設業界 → 建設業許可、経営事項審査など
- 運送業界 → 運送業に関する許認可
- 外国人との接点が多い仕事 → 在留資格関係
など、自分が現在いる業界と行政書士業務が結びつく可能性があります。
本業として行政書士事務所を経営するなら、継続的に仕事が入る営業ルートを作る必要があります。
しかし、副業なら必ずしも毎月大量の案件を獲得する必要はありません。
自分の周囲で数か月に1回程度、行政書士業務につながる相談が発生するのであれば、副業として成立する可能性があります。
一方で、行政書士業務では官公署への申請などもあるため、平日の昼間に全く動けない方には難しい面があります。
シフト勤務や平日休み、有給休暇を取りやすい方などは、比較的相性が良いでしょう。
③ 宅建士・FPは「すでに仕事の近くにいる人」に向いている
宅建士やFPは、資格そのものよりも「今いる環境」が重要だと考えています。
例えば宅建士なら、
- 不動産会社に勤務している
- 不動産投資をしている
- 不動産業界とのつながりがある
といった方です。
すでに不動産に関する仕事や人脈があるのであれば、資格を活かせる可能性があります。
一方、不動産業界と全く接点がない会社員が宅建士を取得し、「資格を取ったので副業を始めよう」と考えても、まず仕事を獲得するところから始めなければなりません。
FPも同様です。
保険、銀行、証券、不動産などの業界と接点がある方なら、相談業務につながる可能性があります。
ただし、FP資格を取得しただけで家計相談などの仕事が自然に入ってくるわけではありません。
特にFPの場合は、資格を実際の収入に変えるところには一定のハードルがあると感じています。
④ 社会保険労務士は副業としてどうなのか
社会保険労務士については、少し判断が難しいところです。
私の周囲にも、社労士資格を持っている会社員の方はたくさんいます。
ただ、会社員を続けながら、社労士として外部から仕事を受注している方は、中小企業診断士ほど多くは見かけません。
どちらかというと、人事・総務などの部署で社労士資格を本業に活かしている「企業内社労士」の方が多い印象です。
もちろん、会社員をしながら社労士として活動することも可能です。
ただ、副業目的で取得するのであれば、「資格を取った後、どこから仕事を獲得するのか」をあらかじめ考えておく必要があるでしょう。
資格学校の講師や執筆という副業もある
ここまで資格ごとの代表的な仕事を見てきましたが、複数の資格に共通する仕事もあります。
例えば、資格学校の講師、セミナー、執筆、教材作成などです。
ただし、こうした仕事は資格を取得すれば必ず依頼されるものではありません。
依頼につながるルートや実績が必要になるため、「機会があれば狙える仕事」くらいに考えておいた方がよいでしょう。
まとめ|副業で稼げる国家資格は人によって違う
「副業で一番稼げる国家資格は何ですか?」
この質問に、一つの資格名だけで答えるのは難しいと思います。
重要なのは、
- 自分がいつ稼働できるのか
- どの領域なら仕事につながる人脈があるのか
- 本業と競合しないのか
という3つです。
さらに、資格の登録費や維持費、確定申告などの手間まで考えて、
「自分の場合、この資格で年間50万円程度の仕事が発生しそうか?」
と具体的に考えてみてください。
例えば1件10万円の仕事なら年間5件です。
そこまで落とし込んで考えると、自分に向いている資格がかなり見えやすくなります。
特に40代・50代であれば、これまでの仕事を通じて築いてきた経験や人脈があります。
すべてをゼロから始める必要はありません。
これまで積み上げてきた経験や人脈に国家資格をプラスして、副業を作る。
平均年収や資格ランキングだけで選ぶよりも、そんな視点から国家資格を選んでみてはいかがでしょうか。

