最近、経営コンサルタントの倒産が急増しているというニュースが話題になっています。特にコロナ禍の補助金需要に支えられていた事業者が、需要減少とともに経営難に直面していることが背景にあります。では、この動きは中小企業診断士にも影響を及ぼすのでしょうか?本記事では、コンサルタント業界の現状と中小企業診断士への影響について詳しく解説します。


経営コンサルタントの倒産増加の背景

経営コンサルタントの倒産が増加している理由は、主に以下2つではないかと思っています。経営コンサルタントの倒産が増加というニュースを受けて、ニュース記事のコメント欄などでは経営のプロがなぜ倒産するのかというコメントが多く投稿されていましたが、実際に多くの人がイメージする経営のプロといわれるような事業系経営コンサルタント以外のコンサルタントが多く含まれていると考えられます。

補助金特需の終焉と特需を前提に固定費を増やしたコンサル会社多くあった

コロナ禍において、各種補助金や助成金の申請支援を中心に事業を行っていた経営コンサルタントは多く存在しました。しかし、補助金制度の縮小や終了に伴い、これらに依存していたコンサルタントは収益基盤を失い、経営が成り立たなくなっています。

補助金特需で固定費増加

コロナ特需の最中、多くのコンサルタント会社は事業拡大を図り、オフィスの移転や従業員の増員を行いました。しかし、需要減少後も高止まりした固定費が経営を圧迫し、資金繰りの悪化を招いています。

事業再構築補助金の入金遅延

補助金申請サポートを成果報酬型で提供していた事業者は、補助金の入金が遅延することにより、キャッシュフローの問題に直面しています。これにより、資金繰りが滞り、倒産に追い込まれるケースも増えています。

帝国データバンクの調査によると、2023年には経営コンサルタント業における倒産件数は154件に達しました。そのうち、143件は資本金1000万円未満の小規模事業者であり、零細企業が特に厳しい状況に置かれていることがわかります。倒産した経営コンサルタントの負債総額は約120億円ですが、その中でも北浜グローバル経営の20億円超の負債が全体の金額を押し上げています。北浜グローバル経営などは固定費を増加させたにも関わらず事業再構築補助金の入金が遅れて収益が悪化したといわれており、典型的な事例と思われます。



経営コンサルタントといえども経営のプロではないケースが多くある

経営コンサルタント業は、日本標準産業分類において幅広く定義されており、実際には多種多様な業務を担う事業者が含まれます。以下のような特定分野に特化したコンサルタントも「経営コンサルタント」として分類されています。

  • 飲食業コンサルタント
  • SNSマーケティングコンサルタント
  • ホテル業コンサルタント

これにより、必ずしも経営の全般的な支援を行っているわけではなく、特定領域に偏ったコンサルタントも多数存在しています。特に業界特化型の経営コンサルタントなどは、業界全体の業績が悪化するとコンサルタントにも影響したり、業界に変革があると従来の手法が通じずに業績が悪化するケースが考えられます。


中小企業診断士への影響は?

経営コンサルタントの倒産増加は業界全体に影響を及ぼすものの、中小企業診断士にとっては必ずしも脅威とは言えません。むしろ、診断士には以下のような強みがあり、安定した活動を続けることが可能です。

国家資格による信頼性

中小企業診断士は国家資格であり、経営コンサルタントの中でも専門性と信頼性が高く評価されます。特に、補助金申請や経営改善計画などの業務では診断士資格が必須ではないとはいえ、診断士であることから依頼されるケースが多く、差別化が図れます。

公的機関との連携

診断士は商工会議所や中小企業支援センターなど公的機関と連携して活動する機会が多く、安定した案件を確保できる基盤があります。これにより、市場環境の変化に左右されにくい立場を維持できます。

多様な業務領域への対応

中小企業診断士は補助金支援だけでなく、事業計画策定、経営改善、事業承継、販路拡大など幅広い領域で活動できるため、特定市場の縮小による影響を受けにくい点も強みです。



今後の展望と診断士が取るべき対策

経営コンサルタントの倒産が増加している背景には、コロナ特需の終焉や固定費の増加、入金遅延など複数の要因があります。しかし、中小企業診断士は国家資格としての信頼性と公的機関との連携、多様な支援領域によって、安定した活動を続けることが可能です。

今後、診断士として活動を継続するには、補助金に依存せず、経営支援全般に対応できるスキルを磨くことが重要です。この変化をチャンスと捉え、専門性をさらに高めることで、持続可能なコンサルティング業務を構築していきましょう。