「中小企業診断士と行政書士、どっちを取るべき?」
「独立して稼ぎやすいのはどっち?」

こうした悩みを持つ人は非常に多いです。
ネット上には比較記事や動画も多くありますが、実際には片方しか持っていない人の意見がほとんど。

この記事では、中小企業診断士・行政書士の両方を保有し、実際に9割以上を診断士業務で稼いでいる筆者が、リアルな視点で両資格の違いと稼ぎ方を解説します。


1. 中小企業診断士と行政書士の基本的な違い

項目中小企業診断士行政書士
資格区分経営系国家資格法律系国家資格
主な業務経営診断・改善計画・補助金支援官公署への書類作成・申請代理
独立/企業内独立・企業内どちらも可能基本は独立のみ
登録費用ほぼ0円(協会任意加入)登録約30万円+年10万円前後
試験形式一次:7科目マーク/二次:事例記述法律知識中心マーク+記述
試験時期一次:8月/二次:10月11月第2日曜
平均勉強時間約1,000時間約600〜800時間

どちらも国家資格ですが、中小企業診断士は経営支援の専門家、行政書士は法律・手続きの専門家という立ち位置です。


2. 独立割合と働き方の違い

行政書士は「独立率が高い資格」と言われますが、実際には少し誤解があります。
というのも、行政書士は企業内で働く選択肢がほぼ存在しないため、結果的に「独立せざるを得ない」資格なのです。

一方で、中小企業診断士には「企業内診断士」という形があります。
特に金融機関や大手企業では、社員の資格取得を奨励しており、銀行によっては養成課程の費用を会社が負担するケースもあります。
このため、診断士は独立・企業内の両方で活躍できるのが特徴です。

また、診断士協会の調査では48%が独立診断士
「診断士は副業ばかり」というイメージほど少ないわけではありません。


3. 稼ぎ方の構造とスキームの違い

行政書士の稼ぎ方

  • 官公署への許認可申請(建設業許可・農地転用・産廃など)
  • 契約書・遺言書・相続関連書類の作成
  • 手続きに関する相談業務

行政書士の仕事は「単発型」。
1件あたりの単価は悪くないですが、リピートが少ないため常に新規顧客を探す必要があります。
ここが稼ぎにくいと感じる最大の理由です。


中小企業診断士の稼ぎ方

  • 商工会議所・よろず支援拠点など公的支援機関の相談員
  • 金融機関からの経営改善計画策定依頼
  • 補助金申請支援
  • 顧問契約による継続支援

診断士の特徴は「積み上げ型」。
継続的に依頼が入る仕組みがあり、仕事が自然に回る構造ができている点が強みです。


4. 「独占業務」の誤解

行政書士には独占業務(書類作成や申請代理)がありますが、
実際には全国に数万人の登録者がいるため、「独占だから安定」というわけではありません。

一方で診断士には法的な独占業務はありませんが、
商工会議所や金融機関などでは「中小企業診断士限定」で相談員を募集するなど、事実上の独占領域があります。

✅ 独占業務の有無よりも、「誰に仕事を頼みたいと思われるか」の方が重要です。


5. 診断士の落とし穴 ― 実力差がすべて

行政書士の許認可業務は「誰がやっても結果がほぼ同じ」になる傾向があります。
一方で、中小企業診断士の業務は答えがない世界
経営アドバイスや補助金支援では、実力によって結果がまったく異なります。

特に補助金支援では、診断士によって採択率が大きく違い、
「採択率が高い人に仕事が集中し、低い人には依頼が来ない」ことも珍しくありません。

つまり、診断士は稼ぎやすい反面、実力がないと稼げないという厳しい現実があります。


6. 試験の難易度と現実的な取得順

資格取得のハードルは、明確に差があります。

  • 行政書士:知識型試験。年数をかければ合格可能性が上がる。
  • 診断士:特に二次試験は知識だけでは通用せず、「思考力・適性」が問われる。
     → 何年も挑戦しても受からない人もいる。

試験時期も

  • 診断士二次:10月
  • 行政書士:11月

と近いため、同時受験は非現実的
現実的には「行政書士 → 診断士」の順で取るのがおすすめです。


7. 平均年収と稼げるラインの目安

行政書士の平均年収は約500万円前後とされています。
このレベルであれば、診断士として商工会議所や支援機関で活動すれば十分到達可能です。

一方、実力のある診断士は年収1000万円を超えることも珍しくありません。
ただし、資格を取っただけでは仕事は来ないため、スキル+信用+人脈がカギになります。


8. ダブルライセンスという選択肢

行政書士法改正もあり、診断士×行政書士のダブルライセンスには大きなメリットがあります。
行政書士としての「許認可・法的サポート」と、診断士としての「経営支援」を組み合わせれば、
中小企業への包括的な支援が可能になります。

筆者自身も、診断士が軸で行政書士をサブに活用。
たとえば経営支援の中で「許可申請」や「酒類免許」「産廃許可」などを自分で取れることで、
+10万円〜20万円の追加収入になるケースもあります。


9. まとめ:どちらが「いい資格」かではなく、どう活かすか

  • 稼ぎやすさは構造的には中小企業診断士が有利
  • ただし、診断士は実力差が収入に直結。
  • 行政書士は単発中心だが、スキームを作れば安定化も可能。
  • 試験の難易度を考えると、「行政書士 → 診断士」の順が現実的。
  • ダブルライセンスで間口を広げれば、仕事の幅は確実に拡がる。

💡 結論:「どちらが稼げるか」ではなく、「どちらをどう活かすか」。