前回、令和2年の中小企業診断士2次試験事例Ⅰを例に与件文の抜き出し方、言い換え方を紹介しました。本日は同じく令和2年度の事例Ⅱをもとに解法説明したいと思います。
▽前回の令和2年の中小企業診断士2次試験事例Ⅰ解説はこちら
令和2年度の中小企業診断士2次試験事例Ⅱの解法説明
今回の問題の大きなポイント
令和2年度の中小企業診断士2次試験事例Ⅱの大きなポイントは以下の3点です。今回は、前回ほど単純に段落単位の抜き出しというわけにはいきません。事例Ⅱは与件文の情報量が多く、例年、このような形になるケースが多い気がします。
- 与件分全体の情報を漏らすことなく各設問に活かす
- 設問文の条件、設問文内のヒントを見落とさない
- 事例Ⅱはマーケティング戦略がテーマ、つまり売上が大事
与件企業の概要
まず、最初にさっと与件文を読んで理解しておきたいのは以下のような点になります。
- B社は、地域の活力が低下しているX島にある農業生産法人
- 10年前に島に自生しているハーブを産業とするべく設立された
- ハーブ栽培手法の確立から着手
- ハーブの用途は多数あるが、製品化は売上は芳しくなく一度挫折
- 大手製薬会社との出会いが契機
- 輸送コストが問題となり、工場を設立し乾燥粉末を出荷可能にした •
- 大手製薬会社の製品売れ行きが鈍化し製品の製造中止の可能性
- 安眠系のサプリとして他社との取引を模索するが規模は小さい
- 自社ブランドとして再びチャレンジ
それでは各問題の解説に入ります。
第1問(配点 20 点):現在の B 社の状況について、SWOT 分析をせよ。各要素について、①~④の解答欄にそれぞれ 40 字以内で説明
- SWOT分析は事例Ⅱで2年連続出題
- 基本的に単純な抜き出し型となるが与件文全体に情報が分散してる
- シンプルに抜き出せる要素と少し捻らないといけない要素がある
ここでワンポイントアドバイス
●2次試験でSWOT分析の色分けはしない方が良い
何が強みで何が弱みなのか、何が機会で何が脅威なのかというのは企業の状況によって変化する
⇒ある要素を強みと決めつけることで正しい回答ができない可能性がある。
⇒色分けしてしまうと自分自身が混乱してしまう。
●2年連続でSWOT分析が出ています。
最初の与件文を読む前に設問を確認してSWOT分析があるかどうかを確認してから読みだすというのは一つの対策になると思います。
下記のように鉛筆で下線を引いて、SWOTの頭文字をメモする
前述のようにSWOT分析を色分けするのはあまりオススメしません。私の場合、下記のように鉛筆で下線を引いてSWOTの頭文字を書くようにしておきました。この形であれば間違えても簡単に修正ができます。
この問題は単純な抜き出しになるのですが、要素によって与件文に書かれているボリュームは異なります。すべてが同じようなボリュームで記載されているわけではありませんので注意しましょう。
強み
弱み
機会
脅威
第2問(配点 30 点)Z 社との取引縮小を受け、B 社はハーブ Y の乾燥粉末の新たな取引先企業を探している。今後は Z 社の製品とは異なるターゲット層を獲得したいと考えているが、B社の今後の望ましい取引先構成についての方向性を、100 字以内で助言せよ。
設問の中に重要なポイントが2点
Z社の製品とは異なるターゲット層、新ターゲットは明記されてない。
この設問では、Z社の製品のターゲットをきっちりと確認することが一番のポイント
望ましい取引先構成についての方向性ということなので具体的ある必要はない
何が問題かと言えば、下記の依存体質であるということ
つまり、Z社のターゲット外の新規顧客をターゲットにするということと、Z社に依存している状況を打破するということを書ければ及第点は取れる
第3問(配点 30 点)B 社社長は最近、「眠る前に飲むハーブティー」の自社オンラインサイトでの販売を手がけたところ、ある程度満足のいく売上げがあった。
(設問 1 )上記の事象について、アンゾフの「製品・市場マトリックス」の考え方を使って50 字以内で説明せよ。
この設問は設問文だけで解けると言っても過言ではない
アンゾフの「製品・市場マトリックス」は以下のとおり。
既存製品 | 新製品 | |
既存市場 | 市場浸透戦略 | 新製品開発戦略 |
新市場 | 新市場開拓戦略 | 多角化戦略 |
本件の場合、市場は、オンラインサイトなので新市場、製品は、ハーブティーという新製品。つまり、「多角化戦略」が正答と思われる。50字という制限を考えても余分なことを答えず素直に解答すれば良いと思われます。
(設問 2 )B 社社長は自社オンラインサイトでの販売を今後も継続していくつもりであるが、顧客を製品づくりに巻き込みたいと考えている。顧客の関与を高めるため、B社は今後、自社オンラインサイト上でどのようなコミュニケーション施策を行っていくべきか。100 字以内で助言せよ。
この設問も設問文が重要
▶顧客を製品づくりに巻き込みたいと考えている。
▶自社オンラインサイト上でのコミュニケーション施策
事例Ⅱで重要な点は、最終的な目的は売上を上げるということであるという点。つまり、施策⇒効果⇒売上という回答が必要となる。具体的には、
①顧客を製品づくりに巻き込みたい
- 顧客ニーズを把握した新商品を開発したい⇒新商品の売上
- ファン化して固定客を増やしたい⇒リピート客の売上
②コミュニケーション施策
ネットのコミュニケーション施策は、SNS、メルマガ、掲示板が鉄板解答
※最新のツールなどに拘る必要はない。
第4問(配点 20 点)B 社社長は、自社オンラインサイトのユーザーに対して、X 島宿泊訪問ツアーを企画することにした。社長は、ツアー参加者には訪問を機に B 社と X 島のファンになってほしいと願っている。絶景スポットや星空観賞などの観光以外で、どのようなプログラムを立案すべきか。100 字以内で助言せよ。
与件分の下記の2か所がポイント
⇒観光以外でという制約があるので、ツアー参加者に見せることができる島の要素は、島の風習か工場くらいしかない。
⇒プログラムの立案だから、誰と何をしてどのような効果(目的)を求めるのかと考える。常に【効果(目的)】に注目する。
目的はX島のファンとあるが、その本当の目的は、「島の活性化と同時に売上をあげること(ロイヤリティ向上)」であることを忘れずに
令和2年度事例2のポイント振り返り
- 与件分全体の情報を漏らすことなく各設問に活かす
- 事例Ⅱは与件文のボリュームが多く、事例Ⅰほどシンプルに段落単位で抜き出すことができないケースが多い。
- 情報を見落とさないことに注意するとともに解答作成のタイミングについて注意する。
- 設問文の条件、設問文内のヒントを見落とさない
- 設問文も与件文の一部のように考えて読むこと
- 事例Ⅱはマーケティング戦略がテーマ、つまり売上が大事
- あくまで中小企業に対する診断、助言であり、最終的には売上にどのようにつなげるのか。 中小企業の場合、マーケティングはロイヤリティ向上が基本。そのために製品・サービスの差別化やオーダー対応などがあると考える
動画でも詳しく解説しています。